クリッカーで愛犬のトレーニング

  
ペギー・ラーソン・ティルマン 著
河島 孝 監訳/舩江かおり 訳
クリッカーを使えば、犬の訓練もしつけも簡単。楽しい時間を実用的に愛犬と過ごせる。教えるゲーム。
B5判・214ページ 定価1,890円[本体1,800円+税]
ISBN 4-86108-018-5 C2077 \1800E
2005. 4. 30  第1版 第1刷

目 次

 より良い方法を求めて
犬を引っ張ったり、大声で叱ったりするのに、うんざりしていませんか? クリッカー・トレーニングを簡単にご紹介しましょう。飼い主の望むことを犬に伝える、簡単で楽しい方法です。 .......................... 1
ゲームを使ったトレーニング、それがクリッカー・スタイル .... 2
本書の使い方 ................ 4

 とにかく始める
クリッカー・トレーニングを始めるための簡単な道具を紹介します。何を教えるかを選ぶための表もあります。.... 7
必要なもの................. 8
ご褒美............................ 10
クリッカーの音を教える................... 12
セッション.......................... 14
クリッカーを使った解決策............... 16

 マナー
クリッカー・ゲームで、犬をお行儀のいい家族の一員にしましょう。............................. 22
犬にとっての人間のマナー.............. 24
お座り:マグネット方式................. 26
お座り:キャプチャ方式................. 28
お座り:シェーピング方式................. 30
魔法の目........................ 32
敷物の上に行く ..................... 34
いい子ちゃん........................ 36
リードを緩めて歩く:木になる.. 38
リードを緩めて歩く:マグネット方式 ... 40
リードを緩めて歩く:ペナルティ・ヤード...... 42
鬼ごっこ .................... 44
子犬でピンポン:呼ばれたら来る... 46
かくれんぼ:呼ばれたら来る...48
伏せ:キャプチャ方式............... 50
伏せ:マグネット方式................ 52
待て ............................... 54
高度な待て................. 56
立て:マグネット方式............ 58
犬の禅.......................... 60
放っておけ ............................ 62

 その他の実用的なトレーニング
飼い主と犬の幸福と健康のために、ほかの動作も教えましょう。.................................................. 67
ゲーム:ちょうだい ......................... 68
物を拾う ..................... 70
ゲーム:取れ ....................... 72
ゲーム:取れ 2 ....................... 74
ゲーム:探せ ........................ 76
クレート・トレーニング....................... 78
ハウス・トレーニング...................... 80
合図のベルを鳴らす.......................... 82
ハウス・トレーニングのコツ ............ 84
自動車に乗る .......................... 86
ハンドリング ........................... 88
有益な芸とゲーム
ゲームや芸で、犬が有益な存在になります。飼い主は教師としての腕を上げ、友人を驚かせることができるでしょう。............. 91
有益な芸を教える ............... 92
かわいいしぐさを見つける .............. 94
ターゲット・スティック/ターゲット ................ 96
鼻 ............................. 100
手 .............................. 104
スピン .............................. 106
トス ............................. 108
お片付け ........................ 112
芸のアイデア .................... 116
スーパー・クリッカー
教える腕を磨く方法...................... 119
スーパー・クリッカーになるには .............. 120
場所を変える .................. 122
クリッカーをなくす ................... 124
ご褒美に変化をつける ...................... 126
ゲーム・プラン ........................ 128
教室を見つける ..................... 132
電話問い合わせフォーム ................ 134
教室見学フォーム ............... 136

 安全な犬を育てる
人を傷つけたり、悩ませたりしないことを教えるには...... 139
噛むのを防ぐ .......... 140
監守行為に対する解決策 ........ 142
子どもと犬の安全 ............ 144
犬と安全に遊ぶ ................ 146
無駄吠えの問題..................... 148

 犬の権利宣言
犬が長く、幸せに生きるためには、何が必要で、何を与えてやるべきでしょうか。そのような基本的なニーズを満たす、楽しくて有益な方法を紹介します。 .................. 151
ニーズ ............................. 152
健全な食事 ........................ 154
社会化 ......................... 156
コンパニオンシップ...................... 158
安全な環境 ................... 160
遊び ............................... 162
知育玩具..................... 164
仕事 ............................... 166
運動 ............................ 168
刺激 ......................... 172
平和と静けさ ...................... 174
理解....................... 176

ヒントと用語 ......................................... 178
情報源 ............................................. 191
クリッカー・トレーニング関連Webサイト .............. 192
その他の犬関連サイト ................ 192
本 .............................. 193
ビデオ ............................. 194
クリッカー・トレーニング用具 ............... 194
犬関連の協会 ......................... 195
索引 ................................................. ***

 図表リスト
ご褒美 ............................................... 11
1日の例 .......................................... 15
解決策 ............................................. 17
ハウス・トレーニングのコツ .............................. 85
ハンドリング ............................................. 89
芸を教える理由 ...................................... 116
芸のアイデア ....................................... 116
クリッカー・トレーニングの5つのステップ ........................... 121
ゲーム・プラン ........................................... 130
電話問い合わせフォーム ................................... 134
教室見学フォーム .................................. 136
子どもと犬の安全 ............................... 144
社会化 ........................................... 156
コンパニオンシップ ........................................ 159
犬に安全な庭の条件 .......................... 161
犬関連の活動 ................................... 169


はじめに 
 犬は、玄関のチャイムが鳴れば人が家に入ってくることを、あっという間に悟りますね? 缶切りは何を意味するでしょう? 飼い主が上着を着たり、スーツケースを取り出したりするのは、何の前触れ? 犬は、そういうことを魔法のように早く学びます。犬は賢い動物です。本書では、その犬の知性を、飼い主にとって有利に使う方法をご紹介します。
 学習の魔法を起こすためには、小さなプラスチックのクリッカーを使います。これは、押すと特有の音を出します(クリッカーの入手方法については、194ページを参照)。クリッカーは、マーカー信号です。犬に「そうよ、そうしてほしかったのよ」と教え、その行動にご褒美を約束するものです。飼い主の望む行動を正確に切り取る、カメラのシャッターのようなものです。
 クリッカー・トレーニングは、正の強化を使って犬と意思疎通をする簡単な方法で、すでに実証されています。クリッカー・トレーニングは、学習とオペラント条件づけの法則に関する科学的研究に基づいています(185ページ)。
 1985年、イルカの調教師だったカレン・プライアは、応用オペラント条件づけに関する書籍、『Don't Shoot the Dog』(邦訳『うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで』二瓶社、1998)を出版しました(194ページ参照)。そして、この学習理論を使えば、人間を含め、さまざまな動物を強制力なしでトレーニングできることを示しました。人々は、犬のトレーニングについて、考えを改めるようになりました。1992年には、犬のトレーナーたちが、セミナーで学んだクリッカー・トレーニングを実践しはじめました。
 クリッカーが犬のトレーニングに使われ始めたのは最近のことですが、クリッカー(または、何らかのイベント・マーカー)は、海洋動物や鳥に対して長年使われてきました。現在、テレビや映画で演技をする動物たちの多くは、クリッカーで訓練されています。障害者を助ける多くの介助動物、警察犬などの使役犬も、クリッカーで訓練されています。クリッカー・トレーニングを使うのに、科学的理論を理解する必要はありません。子どもでも、すばらしいクリッカー・トレーナーになることがあります。しかし、オペラント条件づけを詳しく理解したいと思われる方には、応用オペラント条件づけを明確に説明した文献も数多くありますので参考にしてください(193ページ参照)。
 さて、これからが面白いところです。教えることは、ゲームです。犬にとって、クリッカー・トレーニングは、それ自体が楽しいゲームです。ゲームは簡単。人間が犬の欲しがるものを持ち、犬はそれを得るために何かしなければなりません。
 本書には、具体的にどうやってゲームをするのかが書かれています。しかし、犬も人も十人十色です。ひとつの方法が、全員に有効とは限りません。自分と自分の犬にとって、最善の方法を見つけてください。どの方法も役に立たなかったら、創造力を活用してください。自分の望む行動を犬にさせるまで、実験を重ねてください。強制力は使わないこと。罰を使うと、犬がゲームをやりたがらなくなります。おばあちゃんの知恵をご存知でしょう。「酢より蜂蜜を使ったほうが、たくさんのハエを捕まえられる」
 クリッカー・トレーニングでは、犬がなすべき行動を学んでから、その行動に名前を付けます。従来のトレーニングのように、犬が動作を学ぶ前に命令を与えるのではありません。クリッカー・トレーニングでは、何をしたらいいかを犬が確実に理解するまで待ちます。その後で、犬に「キュー」を教えます。キューは、手の合図でも言葉のキューでもかまいません。キューに関する詳しい説明もあります(182ページ参照)。
 「常にクリッカーを持ち歩く必要がありますか?」とたずねる人が多くあります。私が初めてクリッカー・トレーニングを学んだときも、やはり疑問に思いました。答えは、「いいえ」です。クリッカーは、教えるための道具。いったん犬が飼い主の望む行動を理解したら、その行動にクリッカーは不要です。しかし、それでも私はクリッカーを持ち歩きます。なぜって、犬という友達に新しいことを教えるのは、本当に楽しいからです。
 アン、アンディ、アーフも、皆さんにゲームを教えてくれます。さあ、始めましょう!


著者紹介
ペギー・ラーソン・ティルマン
 ペギー・ラーソン・ティルマンは、自分の教える犬のトレーニング教室のために『Clicking With Your Dog』を制作、執筆しました。受講生が、クリッカー・トレーニングの楽しさを学び、他の人と共有するために、わかりやすく書かれたイラスト入りの本を求めていることを知ったからです。
 ペギー・ティルマンは、楽しく、使いやすい本を作るために、ユーザーフレンドリーなデザインに関する知識を活用しました。ペギー・ティルマンは、人的要因/人間工学エンジニアである夫とともに、人間にとって使いやすいデザイン・システム、機械、環境に貢献しています。そして、最先端の人的要因/人間工学に関する本をMcGraw-Hill社から2冊出版しています。
 ペギー・ティルマンは、教師の資格と行動心理学の学位を持ち、小学校の教師として長年勤務しました。そして、クリッカー・トレーニングが、子どもに対する正しい接し方の概念にぴったり合っていることに気づきました。つまり、公明正大に接し、成功するチャンスを数多く与えてやるということです。その後、ペットの飼い主のための教室を教えるようになり、その過程で、この視覚的な説明書をデザインし、執筆し、挿絵を描きました。
 ティルマン夫婦とチャールズ(スタンダードプードル)は、シアトル近郊のピュージェット湾に浮かぶ島に住んでいます。ペギー・ティルマンの連絡先は、www.magicpaws.com、もしくはmagicpaws@prodigy.netです。


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