中学校・高校でのブリーフカウンセリング 

  
ジョン・J・マーフィー 著
市川千秋/宇田 光 監訳
A5判・240ページ 定価[本体2300円+税]
ISBN 4-931199-84-4 C3037 \2300E
2002. 4. 5  第1版 第1刷

目 次

まえがき 3
 内容について 4
 用語について 5
 謝 辞 5
 著者について 7
1部 解決焦点化カウンセリングの序:経験的理論的な効果
 1 ジャネットの事例:解決焦点化カウンセリングへの招待 3
   てこでも動かない 3
   ますますてこでも動かない 4
   中学校や高校でよくあるシナリオ 5
   解決焦点化カウンセリング:もうひとつの実際的な方法 6
   ジャネットの再訪:解決焦点化アプローチ 7
   事例検討:ロープを下ろす 10
   要約と結論 10
練習問題 11
 2 何が効果をもたらすのか研究結果から言えること 13
   カウンセリングの効果を高める要因 13
   ブリーフセラピー 23
   学校での協同的な問題解決 24
   文化的な配慮と解決焦点化カウンセリング 26
   青年をカウンセリングする 27
   要約と結論 35
   練習問題 35
 3 治療に影響するものおよび前提となるもの 37
   ミルトン・エリクソンの業績 37
   MRI 41
   短期家族療法センター 45
   中学、高校での解決焦点化カウンセリングの仮説 49
   要約と結論 52
   練習問題 52
2部 解決焦点化カウンセリングのステップと方策 55
 4 変化に向けて協同する:効果的な関係を確立し維持する 57
   「大使」の視点を持つ 57
   クライエントの立場と協同する 60
   まとめと結論 76
   練習課題 77
 5 解決へ向けた介入 79
   伝統的な面接の仕方と解決焦点化面接の仕方との比較 79
   解決焦点化による面接の方略 82
   要約と結論 105
   練習問題 106
 6 問題の例外を利用する 109
   例外を利用する5つのEの方法 110
   例外を利用する事例 119
   要約と結論 130
   練習問題 131
 7 クライエントのもつ他のリソースを利用する 133
   クライエントのリソースを利用するプロセス 134
   クライエントのリソースを利用する事例 135
   要約と結論 147
   練習問題 147
 8 問題への取り組み方を変える 149
   大抵失敗する解決努力 150
   取り組み方を変えて問題を断ち切る 153
   取り組み方を変えるための具体的な介入 153
   「何か違ったやり方をせよ」課題 156
   取り組み方を変える事例 157
   要約と結論 163
   練習問題 163
 9 問題に対する見方を変化させる 165
   問題に対して異なった見方を選択させる 165
   問題に対する異なった見方の提示 168
   見方を変化させる事例 168
   要約および結論 181
   練習問題 182
 10 カウンセリングの終結の時期と方法 183
   カウンセリングの終結の指針と方策 183
   要約と結論 186
   練習問題 186
3部 問題解決法と手掛かり 187
 11 ものごとが思い通りに運ばないときの解決の秘訣10 189
   要約と結論 193
   練習問題 194
 12 解決焦点化カウンセリングを実践に移す 195
   現在いるところから始め、ゆっくりと進む 195
   さらに多くのことを学ぶ 196
   「解決焦点化」の考えを実践する 197
   よし行くぞ、ついてこい! 200
 付録A 事項索引 201
 付録B Part1 9つの点問題 205
      Part2 9つの点の解法 206
 付録C 解決発見尺度(S-Id) 207
 付録C 簡易調査 209
 付録D 生徒が変化を明らかにし、変化を持続させるのを手助けする証書 211
 付録E 解決焦点化カウンセリングの過程 217
References 219
訳分担紹介 224

はじめに 
 中学校、高校の学校カウンセラーは、日々、学校の問題を解決する援助を求められている。 受け入れがたい教室行動、成績不振 、無断欠席等である。このようなリストは年ごとに増えるように思われる。時間制約や過度のケース負担、その他学校専門家の現実に即する、実際的で効果的な問題解決アプローチの必要性も増している。こうした必要性に応じるために、『中学校・高校でのブリーフカウンセリング』が、著された。
 学校カウンセラーの現実から見て、学校問題のすべてに介入したり面接したりする機会とかゆとりは与えられていない。 たとえ機会が持てたとしても、クライエントとカウンセラーが1時間もの間邪魔されずに面接できる伝統的なカウンセリングとは異なっている。学校カウンセリングの最中には、電話がなったり、「入室お断り」とドアに貼ってあるのに、人がノックをするのは珍しいことではない。
 学校カウンセラーには普通、カウンセリング以外にたくさんの仕事がある。思いつくだけでも、食堂の見まわり、時間割作成、グループテスト、教師の代役、等である。カウンセラーの中には、カウンセリングをあきらめる人もいる。多くの制約と仕事で手が回らなくなる。
 学校はカウンセリングに合わせてくれないので、カウンセラーが学校に合わせなければならない。理想ではないが、効果的なカウンセリングは、廊下でも、電話でも、食堂でも、駐車場でも、どんなときでも起こりうる。
 『中学校・高校でのブリーフカウンセリング』では、 可能な瞬間はいつでもとらえて、あらゆるカウンセリングの機会を最善に生かすよう、カウンセラーに勧めている。本著は学校での問題を解決するため、実際的な、経験にもとづくアプローチの形で希望を与えている。
 解決焦点化カウンセリングは、短期間で学校の問題を変化させようとするユニークな問題解決の方法である。生徒や親や教師が自分自身の独自なリソースや力強さを発見し、問題に適用するよう促すことで、解決は早まる。クライエントがカウンセリングに持ち込んでくるものを尊重し利用すること。これが、解決焦点化アプローチの核心である。
 解決焦点化と他のカウンセリングアプローチとの間には、顕著な違いがある。だが、その人の理論的指向とか実践モデルがどんなものであれ、本著の考えと方策は、うまく適用できる。解決焦点化カウンセリングは、学校問題やそれを抱えている人をみるのにユニークな見方を提供する。国中でワークショップを実践する中でわかったのだが、学校専門家は、このアプローチをとても気に入る。その理由は次の通りである。

・きれいごとで済まそうとしたり、複雑なやり方で取り組むのではない。カウンセラーが「うまくいくことをする」とき、カウンセリングはずっと効果がある、という実際的な立場をとる。
・考え方がシンプルであり、心理学とかカウンセリングの深い学識を必要としない。
 そのことで、親や教師、学校行政職もやってみようかという気になる。
・ちいさな変化と理にかなった目標に焦点を当てる。 このことは学校カウンセリングの現実 によく合っている。
・力強さ、成功、リソース、希望を強調する。
・多様な意見や信念を受け入れたり合わせたりするように促す。
・他の何をやってもうまくいかないようなとき、たくさんの方策と選択肢を提供してくれる。
・学校カウンセリングをもっと楽しくし、楽な気持ちでできるようにしてくれる。

内容について
 『中学校・高校でのブリーフカウンセリング』は、三部からなっている。第1部は、解決焦点化カウンセリングを、短い事例研究(1章)を通して紹介する。また、経験的、臨床的な影響(2章と3章)について述べる。章の終わりには、短い練習問題が出されている。自分自身の事例や状況に、カウンセラーが解決焦点化カウンセリングの方策を適用しやすくするためである。
 第2部では、本アプローチを中学校、高校のさまざまな問題に適用した実例を述べる。4章から10章では、カウンセリング過程の各段階に取り組む。最初に効果的な関係を築くところ(4章)から終結(10章)までの過程である。
 5章では、情報収集すると共に解決にも着手させるための、「介入的な」面接の仕方を具体的に示す。6章から9章までは、学校問題に対する4通りの介入を述べる 。問題の例外を利用する(6章)、他のクライエントのリソースを利用する(7章)、問題に関わる行動を変化える(8章)、問題の見方を変える(9章)、である。 それぞれの章では、介入方策を取り上げ、続いて、さまざまな現実の学校問題に適用した事例を述べる。 ほとんどの事例は、実際のカウンセリングセッションからの抜粋である。 そのため関係者の名前や詳細は、特定されないように変えられている。私自身は、2事例(「本読みを拒否した生徒」と「歩道の掃除を2回する」)を除き、すべての事例に関わってきた。
 第3部は、2つの章からなる。11章は、ものごとがうまく運ばないときに考える問題解決の指針を示す。 12章が最後になるが、現場で解決焦点化カウンセリングを実践にうつすためのアドバイスをする。
 本著は、学校カウンセラー、サイコロジスト、ソーシャルワーカー、大学院生、その他の中・高校生にカウンセリングをする人のために、書かれたものである。教師も学校管理者もまた、解決焦点化カウンセリングの考えや方策が仕事の中で役だつことを見いだしてきている。

 用語について
 クライエントという言葉は、本著では、学校の問題を変えるためにカウンセラーが取り組むどんな相手を述べるのにも使う。 生徒、親、教師、学校管理者などである。 カウンセリングという言葉は、カウンセラーが学校の問題を解決する目的のためにクライエントと取り組むどんなタイプの仕事を述べるのにも使う。これは、生徒との個人、グループセッションと、教師や親とのコンサルテーションを含む。
 解決という言葉は、 学校問題でのどんな目にみえる改善にも使われる。問題が完全になくならなくともかまわない。また、中学校は6学年から8学年を意味し、高校は9学年から12学年を意味する(訳注:アメリカの教育制度では、州によって就学年齢が異なり、日本の小、中、高の区分とは必ずしも一致しない)。
 本書は、あなた向きか? この点については、次のような質問を考えていただきたい。

・ 問題がないと生徒が思っているとき、問題あると確信させようとしたことがあるか?
・カウンセリング中に、生徒とか親の目が興味を失ったように、どんよりするのをみたことがあるか?
・あらゆる難問に答えてくれる「専門家」として見られたとき、重圧を感じたり、恐縮したことがあるか?
・「教師や親を変えることさえできれば、この問題は解決されうる」と思ったことがあるか?
・「もっと簡単なカウンセリングの方法があるのでは」と思ったことがあるか?
・カウンセリングはもっと楽しくあってほしいと思ったことがあるか?

 このような質問に、本書は取り組んでいく。そして、これらの質問に答えるための実際的な方策を示していく。


著者紹介
  ジョン・マーフ博士は、セントラル・アーカンサス大学の心理カウンセリングの助教授である。大学で博士は、カウンセラーとサイコロジストの研修を実施している。学校問題に焦点を当てた私的な実践も行なっている。 中等教育での心理学の学位を得てすぐに、高校で2年間教師をしていた。次に、シンシナチ大学で学校心理学の修士と博士の学位を得た。そして、13年間にわたり、さまざまな生徒を抱えた都市部の校区、ケンタッキー州のコビントン公立学校で、専任の学校心理士として仕事をした。 その間、中学校や高校の問題に関して、生徒や親や教師と共に幅広く取り組んでいる。
 博士は、1992年度のケンタッキー州学校心理士ナンバーワンに指名された。1993年度には、学校心理士全国ベスト5に選ばれた。ストラテジック家族療法で、学位修得後の研修を終えた。時間制限の学校カウンセリングに関する数個の論文と分担執筆があり、最近、「学校問題への短期介入」(Guilford Press; 邦訳『学校で役立つブリーフセラピー』金剛出版1999)という書物をバリー・ダンカンと共にいちじるした。
マーフィ博士は、カウンセラーやサイコロジスト、ソーシャルワーカー、教師、 行政職らのために、国中で研修ワークショップを頻繁に開いており、売れっ子の講師である。


監訳者紹介
 市川千秋 三重大学教育学部 学校心理士 臨床心理士
  主な著書:「効果的な学校カウンセリング」(編訳 二瓶社)、「学校で役立つブリーフセラピー」(監訳 金剛出版)、「自由バズを取り入れた授業の進め方」(編著 明示図書)
 宇田 光 松阪大学政策学部 学校心理士
  主な著書:「学校を変えるカウンセリング」(監訳 金剛出版)、「ブリーフ学校カウンセリング」(編訳 二瓶社)、「動機づけの発達心理学」(共著 有斐閣)、「自分でできる心理学」(共著 ナカニシヤ出版)

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