入門・発達障害と人権

  
スティーブ・ベーカー/エイミー・テーパー 著
渡部匡隆/園山繁樹 訳
A5判・76ページ 定価[本体1000円+税]
ISBN 4-931199-92-5 C3011 \1000E
2002. 9. 15  第1版 第1刷

目 次

はじめに
訳者そえがき

歴史的展望
  1892年/1947年/1953年/1961年/1974年/1984年/1994年/20世紀の終わり
 社会の反応
 学会と専門職の反応

社会の基礎単位としての権利

人権委員会の基本的ガイドライン:組織として検討すべき原則的な事項
 最良の実践
 環境的な文脈
 個人の成長と自己決定
 個人の最大の関心
 危険への自由
 法的問題
  法の適正手続き/インフォームド・コンセント

人権委員会とは何か

人権委員会に関する実践的ガイドライン
委員会の権限
守秘性と匿名性
人々の権利に影響を与える組織内の問題の流れ
人権委員会の審査の進め方
人権委員会に共通する問題
 いくつかの留意事項
  機械的承認の危険性/委員に外部の代表を加える/適時性/
  委員会の付加的な役割/人権委員会の決定に対する不服申立/
  最後に

人権委員会の設置と構成
 委員の構成−委員として誰がふさわしいか?
委員の役割・資質・資格/委員長の役割・資質・資格
 委員に対する任命時研修と在任中研修
 会議の回数
 予定表・通知・招集
 会議次第・署名用紙・議事録
情報と説明の形式

よくある質問とその答え

付録
A.人権委員会のチェックリスト
B.行動管理委員会と人権委員会のフローチャート
C.知的障害者の権利宜言
D.人権委員会の方針
E.委員のための参考図書

引用文献

著者・訳者紹介

はじめに 

 今日、人権委員会(Human Rights Committee)は、さまざまな組織と機関がその使命をきちんと果たすために考え出された組織的な手立てとなっており、障害のある人々を支援するほとんどのヒューマンサービス組織に設置されている。個人の権利は、アメリカ合衆国市民の最も基本的なものである。そして、ある個人が「障害がある」と判定されたことによって、あるいは認知面や身体面に能力的な制約があることによって、低い評価を受けたり、否定的な処遇を受けるようなことがあってはならない。人権委員会の目的は、当該の機関でサービスを受けている人たちの人権の保護・支援およびその権利の行使について、その機関自身がきちんと任務を果たすことができるようにすることである。
 人権委員会は、その組織にとって、つねに「真北」(正しい方向)を指し示す羅針盤となる。このことは、どのような目的の組織においても言えることである。組織は、毎日、質の高いサービスを提供するよう努力しているが、しばしば横に逸れてしまうこともある。しかし、人権委員会は、施設長や管理職、および障害のある人々に対して直接療育や支援を行う職員が、自分たちの職務の中で、つねにそして確実に人権の行使や擁護を行うことができるようにする。
 人権委員会は、鋭い分析力やその任務に特に役立つ能力を持ったさまざまな人々の助けを借りて、その使命を果たすことができる。障害のある人々を支援する組織は、発達障害・身体障害・知的障害のある人々に対して、質の高い支援やサービスを提供したり開発したりするために、人権委員会を設置することが望ましい。
 本書では、読者が関係する組織や機関が、人権委員会を設置したり強化するための課題・疑問・留意点について解説するとともに、基本的なステップを提示するつもりである。

訳者そえがき

本書の歴史的な記述の訳出においては、現在では使われない用語や不快語とみなされる訳語であっても、原著の意図にそった形で訳すようにした。それは障害のある人々の権利についての歴史的な経緯を、当時の状況の中で正しく理解していただきたいという理由からである。もし不快な思いをされる方があれば、この点をご理解いただきたい。
 なお、訳出に当たっては、「歴史的展望」の後半と「よくある質問とその答え」の部分、および全体の文体の統一を園山が担当し、それ以外の部分を渡部が担当した。
 また、原書のタイトルは「人権委員会:組織を正しく方向づける」と訳せるが、障害のある人の人権擁護が主題であるため、日本語訳を「発達障害と人権」とした。



著者紹介
Steve Baker
 大学のヒューマンサービスの分野の仕事に非常勤として勤務し、以来、30年間、非営利サービス機関のほとんどすべての領域で働き、管理の仕事もしてきた。現在、トリニティサービス株式会社の人権委員会委員長を務めている。米国イリノイ州ニューレノックス在住。

Amy Tabor
 自閉症の人のためのグループホームで、直接支援スタッフとしてヒューマンサービスに関わった。以来、ヒューマンサービス機関の中でさまざまな役割を担ってきた。現在、コンサルタント会社の代表を努め、国内の非営利資源の開発、スタッフトレーニングの専門分野、質の向上と組織の改善に関する業務を行っている。米国イリノイ州プレインフィールドで、夫と3人の子どもと暮らしている。


訳者紹介
渡部匡隆 わたなべ・まさたか  博士(心身障害学)
 横浜国立大学教育人間科学部助教授.自閉性障害をはじめとする発達障害のある人たちの社会参加・地域支援が専門。最近の著訳者に、次のものがある。「発達障害に関する10の倫理的課題」(分担訳)二瓶社、「発達障害の理解と援助」(分担執筆)コレール社。

園山繁樹 そのやま・しげき  博士(教育学)
 筑波大学心身障害学系助教授。自閉性障害をはじめとする発達障害や情緒障害のある人たちに対する行動的サービスが専門。問題行動に関する著訳書に、以下のものがある。
 「挑戦的行動の先行子操作」(共訳) 二瓶社 
 「行動障害の理解と援助」(共編著) コレール社

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