親と教師のための AD/HDの手引き

  
ヘンリック・ホロエンコ著/宮田敬一監訳/片野道子訳
注意欠陥多動性障害の子どもの査定・診断・管理・対応のための手短な参考書
A5判・78ページ 定価[本体1200円+税]
ISBN 4-931199-97-6 C3011 \1200E
2002. 11. 30 第1版 第1刷

目 次

 序文と謝辞 vii
Chapter 1 はじめに 1
Chapter 2 AD/HDとは 3
 背 景 3
 AD/HDの定義 4
 AD/HDの原因 5
 合併する障害と関連する問題 7
 なぜAD/HDを診断することが難しいのか 8
 AD/HDの概要 10
  一次的症状 10
  二次的症状 10
  認知障害 10
  出現率 10
  症状の発達的変化 11
  原因論 11
Chapter 3 診断と査定で考慮すべきこと 13
 発達歴と家族歴 15
 複数の状況下における行動 15
 学校の記録の再検討 16
 心理的な査定と認知プロフィール 17
 臨床医学的検査 19
 査定を統合する 20

Chapter 4 学校での介入 21
 学校における基本的な戦略と介入 21
 学級経営 22
  学級組織 22
  物の配置 23
  授業 23
  行動の管理 24
  社会スキル 26
  教授法 27
  一人ひとりへの対応 27
 家庭と学校の連携 29
 まとめ 30
Chapter 5 家庭における介入 33
 知識と理解力を育てる 33
 子どものことを考えて肯定的に行動する 34
 積極的な自尊感情を育てる 35
 日課、計画、予定を実行する 36
 はっきりと意思伝達すること 37
 監督すること 37
 より現実的な目標を持つ 38
 罰を設ける(安全弁) 39
  (1)無視すること 39
  (2)タイムアウト 39
 親自身の気分転換を図る 40
 相談を受けること 40

Chapter 6 薬について 41
 副作用 42
 中毒症状 42
 薬の投与の基準 43
 事後観察 43
Chapter 7 教育施策 AD/HDとSEN規約 45
Chapter 8 両親と査定と介入プロセス 49
Chapter 9 考え方の概要 51

付録A 診断基準 57
 AD/HDのためのDSM‐IV診断基準 57
 多動症のためのICD‐10の診断基準 59
付録B 患者のための身体チェック 63
付録C 両親のためのAD/HD情報 69
 子どもの安全のために 69
 公共の場に子どもを連れていくとき 70

監訳者まえがき 

 今日、学校教育において、教師は多動で衝動的な子どもの扱いに困り、学級崩壊という言葉も出てきて久しい。これらの子どもたちの中には、医師からAD/HD、注意欠陥多動性障害という診断を受けて、投薬治療をうけている子もいる。それらの親の中には、家庭でも学校でも子どもが問題を起こし、非常に苦悩している人もいれば、確かに子どもが家庭で落ち着きなく、衝動的であり困っているが、たとえば、子どもは一人っ子で、家で好きにさせていると、特に、問題とするほどではないと感じている人もいる。しかし、後者の親は、子どもが学級集団になじめず、級友とトラブルばかりを起こして、授業にならないと教師から言われ、どこかへ相談に行くように勧められるケースが多い。前者の親も後者の親も共に、子どもの行動をどう捉え、どのようにすべきかわからず、途方に暮れてしまうことが現実である。
 本書は、注意欠陥多動性障害とは何か、そして、そのような症状を持つ子どもと心理臨床的にどのように接したらよいのかについて、診断、薬物治療を含めて、多面的に教えてくれる。特に、家庭での対処法と学校での対処法について、具体的にわかりやすく、すぐに実践できる形でそれらを提供している。また、親、医師、心理学者、教師の連携のあり方や、特別な支援を要する子どもの教育行政のあり方についてまで、イギリスの例を挙げて、具体的に言及している。その意味で、注意欠陥多動性障害に悩む親と教師にとって、本書は子どもとの新しい相互作用のあり方について一つの可能性を与えてくれている。
 筆者のゼミで本書を取り上げ、読み進むうちに、小学校の現職教諭で特殊学級を担当している研究生の片野道子さんが実際の子どもの指導にとても役立つと本書に関心を示し、訳出の労をとることになった。本書の出版のためにご協力をいただいた、現新潟大学大学院生の大戸麗子さん、片山ユキさんをはじめとするゼミの学生の皆さん、それに、お茶の水女子大学研究生の佐伯奈美さんには、たいへん感謝しています。本書が多くの人たちから親しまれ、現時点における注意欠陥多動障害と呼ばれるものが正しく理解され、子どもたちにとって本当に有益となることを願っています。最後に、筆者の都合で出版が大幅に遅れたにもかかわらず、辛抱強く支援していただいた、二瓶社の吉田三郎社長に感謝申し上げます。

紅葉を迎えた銀杏並木を眺めて
平成14年11月
監訳者  宮田敬一


[著者紹介]
Henryk Holowenko ヘンリック・ホロエンコ
 教育心理学者。イギリス、デボン教育局に勤務。そこで全国規模の学際的研究グループを統括し、AD/HDの子どもたちとかかわるうえでのすばらしい実践指針を作成。以前には、特別な教育的配慮を要する子どもの中等学校教師や公の機関での心理学者として活躍していたこともある。

[監訳者紹介]
宮田敬一 みやた けいいち
1977年 九州大学大学院博士課程退学
1995年 〜2001年 新潟大学教授
2001年 〜現在 お茶の水女子大学教授
専門 心理臨床学
主な編著書 ブリーフセラピー入門』金剛出版、『解決志向ブリーフセラピーの実際』金剛出版、『学校におけるブリーフセラピー』金剛出版、『医療におけるブリーフセラピー』金剛出版、『産業臨床におけるブリーフセラピー』金剛出版
訳・共監訳書 『可能性療法』誠信書房、『アンコモンセラピー』二瓶社、『ミルトン・エリクソン催眠療法入門』金剛出版

[訳者紹介]
片野道子 かたの みちこ
1977年 早稲田大学教育学部卒業
1978年 〜現在 新潟県小学校教諭 障害児学級担任
1999年 〜2000年 新潟大学教育人間科学部 障害児臨床心理学研究生(教員内地留学)

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